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大学院入試(経営学)についてのアドバイス

 

この記事は、僕(2021年卒の大学生)が2020年度に実施された大学院入試(以下、院試)を受けた体験をもとに、これから院試にチャレンジする方に向けてアドバイスをすることを目的として書かれています。

想定している読者としては、⑴社会科学系(特に経営学)の研究科に進学したいと考えている方、⑵ストレートマスターの(学部を卒業してそのまま大学院に進学したいと思っている)方、⑶外部進学者の(自身が所属する大学以外の院試を受ける)方ですが、もちろんこれらに該当しない方でも読んでいただいて問題ありませんし、読んでいる中で参考になりそうな情報が一つでも見つかったと思っていただければ大変嬉しいです。

 

 

1. 院試の前に

院試にチャレンジしようとする前にすべきことがあります。それは、院進したいと思っていることをご両親や指導教員に相談することです。

その前に、一旦ここで進路選択において重要なことは何か整理しておきたいと思います。就活や進学をまとめてここでは進路選択といいますが、この進路選択において重要なことを極論を覚悟で申し上げれば「情報」と「自身の精神状態をうまくマネジメントすること」の2点だと思います。

第一に「情報」ですが、進路選択は端的にいって情報戦だと思います。それは、自身のライバルとなりうる人が知らない情報を手に入れることで、その人よりも有利に行動することができるという意味での情報戦でもあるでしょうし、良い企業や良い進学先についての情報を手に入れることで、より良い進路実現を達成するという意味での情報戦でもあると思います。

最初に、想定する読者は外部進学者だと述べましたが、外部進学者はこの情報戦において内部進学者よりも不利になってしまいがちですので、いかにしてうまく情報を手に入れるのかが進路実現において重要となってきます。

第二に「自身の精神状態をうまくマネジメントすること」です。進路選択を経験したことがある方は分かると思いますが、就活や院試というのはとても心を擦り減らします。ですので、辛い時に助けを求めることができる味方を作っておくことが大切です。

この点が先ほど述べた「院進したいと思っていることをご両親や指導教員に相談すること」と関係してきます。まずは、ご両親や指導教員を味方につけましょう。実際、僕自身も家族や指導教員のサポートがあったからこそ最後までやりきれたのだと感じています。

もちろん、院進したいことをご両親や指導教員に伝えた結果、反対されるという場合もあるでしょう。その時は、自分の思いをじっくり時間をかけて伝えて説得することを試みましょう。何をやってもダメだった時は、とりあえず就職を試みましょう。そして、働き出してでも「自分はやっぱり大学院に行きたい」という気持ちが消えないのであれば、その時に院試をチャレンジすれば良いと思います。経営学分野では一度、一般企業に就職した後に大学院に通い、大変優秀な研究者となった方が多くいらっしゃいます。ありふれた言い方ではありますが、何かを学ぶこと・自己を研鑽することに、遅すぎるということはないのだと思います。

 

2. 大学院選びについて 

院試をチャレンジする上で一番最初に決めなければならないことは、どの大学院に行くのかということです。ここでは二つの選び方を紹介します。

 

2-1. 指導教員で選ぶ

一つ目の選択方法は、「この人から教わりたい!」という先生が在籍する大学院を選ぶというものです。ただし、定年や他大学への転籍等で学生を募集しないケースもあるので、入試要項を見て確認しておく必要があります。

2-2. 大学院の体制で選ぶ

もう一つの選択方法は、 大学院の体制(カリキュラムや募集人数など)で選ぶというものです。現実的には、先ほど述べた方法とこちらの方法の両方を考慮しながら、決めていくことになるかと思います。

2-3. もしものことを考えて複数の院試を受けるべき

インターネットやSNS上では「院試は余裕www」といった主旨のことが見聞きされますが、院試と一言にいっても大学院によって難易度や倍率は様々ですし、試験ですので不合格になることも当然あります。ですので、複数の院試を受けることを推奨します。実際、僕は東京と関西の大学院の二つの試験を受けました。

3. 院試の対策はいつ頃からやるべきなのか

 次に、院試の対策はいつ頃からすべきかという話をしたいと思います。ここでは、院試の内容を①筆記試験(論述試験・英語の試験)と②面接に分けて、それぞれの対策をいつ頃からすべきなのかについて説明します。

3-1. 筆記試験対策:院試の一年前から

 筆記試験は、専門科目の知識について問う「論述試験」と、英語の読解力を問う「英語試験」の二つに分けられます。これらの試験対策は、院試の一年前(学部生なら3年生のはじめ)くらいから始めた方が良いかと思います。これは早すぎると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば公務員になりたいと思っている学生はすでにこの頃から(場合によってはもっと前から)勉強を始めています。また、一般企業に就職したいと思っている学生も3年生のはじめくらいから就活の準備を徐々にスタートさせていきます。ということは、院進予定者も同時期から準備を始めても早すぎるということは無いかと思います。

対策の具体的な内容としては、まず「論述試験」では自身が行きたいと思う大学院の過去問を手に入れることから始まります。ほとんどの大学院ではホームページに過去問が掲載されていますし、もし掲載されていなくても手続きを行うことで大学院から過去問を取り寄せることができます。過去問を手に入れたら、まずは問題を解いてみましょう。問題を解いてもさっぱりわからなかった場合は、指導教員に過去問を示した上で「どのテキストを読めばよいか」という相談をしてみてください。

ここでは、僕が論述試験の勉強で役に立ったと感じたテキストを戦略論・組織論・人的資源管理論・組織行動論という分野別で紹介しておきます。まず、戦略論においては、沼上幹(2008)『わかりやすいマーケティング戦略有斐閣、網倉久永・新宅純二郎(2011)『経営戦略入門』日本経済新聞出版社、琴坂将広(2018)『経営戦略原論』東洋経済新報社の三冊をあげておきます。一冊目と二冊目は戦略論のテキストとしてはかなり有名なもので、読んでおいて損はないです(というより必読)。個人的にオススメしたいのは三冊目です。戦略論の学説史的な説明もされていますし、「スタートアップの企業はどのような戦略をとり、成熟期に至る前までにどのような戦略に転換しなければならないのか」といった組織の発展形態と戦略との関係性について分かりやすく整理されているので、ぜひ読んで欲しいと思います。

次に、組織論です。ここでは次の二冊をご紹介しておきます。一冊目は、高木晴夫訳(2002)『組織の経営学———戦略と意思決定を支える』ダイヤモンド社、二冊目は大月博司・日野健太・山口善昭訳(2017)『Hatch組織論』同文舘出版です。前者がアメリカのビジネススクールで採用されているテキストで、後者がヨーロッパのビジネススクールで採用されることが多いテキストです。

人的資源管理論と組織行動論のテキストを紹介します。なぜ人的資源管理論と組織行動論なのかというと、僕自身がこれらの分野を研究したいと考えて院試を受けたからです。ではまず、人的資源管理論のテキストを八冊ご紹介します。❶上林憲雄編(2016)『人的資源管理』中央経済社、❷奥林康司・上林憲雄・平野光俊編(2010)『入門 人的資源管理(第2版)』中央経済社、❸上林憲雄・厨子直之・森田雅也(2018)『経験から学ぶ人的資源管理』有斐閣、❹平野光俊・江夏幾多郎(2018)『人事管理———人と企業、ともに活きるために』有斐閣、❺上林憲雄・平野光俊・森田雅也編(2014)『現代人的資源管理———グローバル市場主義と日本型システム』中央経済社、❻上林憲雄・原口恭彦・三崎秀央・森田雅也訳(2009)『人的資源管理』文眞堂、❼佐藤博樹・藤村博之・八代充史(2019)『新しい人事労務管理(第6版)』有斐閣、❽八代充史(2019)『人的資源管理論(第3版)』中央経済社。❶〜❻はやさしいものから難しい順で並べたので、この順番で読むことをオススメします(ちなみにこの順番は僕の主観です)。残りの二冊は、経営学というよりも経済学よりのテキストになるので興味がある人は読んでみると良いでしょう。

組織行動論のテキストを三冊ご紹介します。一冊目は、高木晴夫訳(2009)『組織行動のマネジメント』ダイヤモンド社、二冊目は、鈴木竜太・服部泰宏(2019)『組織行動』有斐閣、三冊目は、服部泰宏(2020)『組織行動論の考え方・使い方』有斐閣です。一冊目と二冊目は比較的読みやすく、三冊目は組織行動論の各トピックについて整理されているだけでなく、理論・概念とは何かといった問題にまで踏み込んでおり、この分野で大学院に行きたい人は必読なのではないかといった内容になっています。

ちなみに論述試験の勉強には必ずしも適さないかもしれませんが、大学院で経営学を学ぶなら現代における経営学という学問の立場や状況について知っておいた方が良いと思うので、入山先生の著書(入山章栄(2011)『世界の経営学者はいま何を考えているのか———知られざるビジネスの知のフロンティア』英治出版、入山章栄(2015)『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学日経BP社、入山章栄(2019)『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社)は読んでおいた方が良いと思います。

また、大学院によっては論述試験の「標準参考文献」をホームページに掲載している場合もあります。実際、僕が受験した二つの大学院のうち、一つは標準参考文献を載せていました。標準参考文献が示されている場合は、そのテキストから問題が出題される可能性が高いので、必ず読んでおきましょう。

 

さて、筆記試験にはもう一つ、「英語試験」があります。こちらは大学院によって様々な問題がありますが、一般的にはA4用紙数枚分の英文を日本語に翻訳せよという問題が出題されます。他方、大学院によっては英語試験の代わりにTOEICTOEFL、IELTSのスコアを提出するよう求められるので、これらの英語試験を計画的に受験しておくことも重要です。

 

最後に、論述試験および英語試験の両方において注意すべき点を述べておくと、「字は綺麗に書こう」ということです。字が綺麗であれば加点されるかというと、そんなことは決してないですが、どんなに良い内容の文が書けてもそれが読めなければ意味がないのは当然のことです。論述試験では時間制限内でたくさんのことを書こうと思うがあまり焦ってしまう傾向がありますが、それでも字は丁寧に書くことを推奨します。

3-2. 面接対策:研究計画書を作成してすぐ

面接試験は基本的には事前に提出した研究計画書をもとに行われます。したがって、研究計画書を作成したらすぐに面接対策を開始した方が良いでしょう。対策としては、指導教員に研究計画書を提出し、添削を受けると同時に、書いてある内容に対していくつか質問をしてもらうというのが理想的です。

個人的には筆記試験よりもむしろ面接対策の方が重要だと思います。というのも、 面接試験は筆記試験の何倍も緊張してしまうため、きちんと練習や対策をしておかないと実力が発揮しにくくなってしまうからです。研究計画書を読んで何を質問してくるのかは面接官次第なので「問答集」みたいなものは作りにくいですが、それでも志望動機や研究の意義についてなどほぼ確実に質問されるものに対してはきちんと答えられるよう準備しておいた方が良いでしょう。

また、面接官が必ずしも自身が指導を希望する教員ではない場合もあります。それどころか、大学院によっては自身が専攻したい分野とは違う分野の先生が面接官である場合もあります。実際、僕が受けた大学院のうち一つは、面接官が指導希望教員でもなく、人的資源管理論・組織行動論の先生でもありませんでした。「面接官=指導希望教員 or 自分の専攻分野と同じ教員」と「面接官≠指導希望教員 or 自分の専攻分野と同じ教員」の両方のケースがあることに注意して下さい。

ところで、面接試験においてよく話題にあがるのが服装についてです。僕は無難にスーツを着て試験を受けました(そして受験生のほとんどがスーツでした)が、中には私服の方やスーツだけどネクタイは着けていない方などもいらっしゃいました。服装そのもので合否が決まるということはおそらくないでしょうが、変なところで目立つ必要性はないのでスーツを着て受験する方が良いと思います。

4. 終わりに

この記事では院試に関するアドバイスをいくつか示しました。上に示した情報の中で、一つでも読者の方にとって参考になりそうなものがあれば幸いです。応援しています。